Transform the world 2002 @ WAKO WORKS OF ART 〜記憶の断片から零れ落ちてくるもの〜 |
この作品は、東西統一後の旧ドイツを撮影したシリーズのひとつ。1945年以前と同じ街並だったことに衝撃を受けてから久しい。 対立する世界がある一方で、異なるものたちが一緒になる場合もある。喜びと悲しみが共存する世界・・・。 |
ドイツ人アーティストの作品があれば、“ドイツ軍”がテーマの作品があり実にpolitical・・・。 |
リヒター、シュトゥルート、ウィリアムズ、ティルマンスの他には、マイク・ケリ−、ジェームズ・ウェリングの写真がひしめき合っている。並んでいる、というよりも、言葉を発しているように私には感じられた。 最後の作品は、ニューヨークを中心にアメリカ、そして世界で活躍する写真家杉本博司の「World Trade Center」(1997)である。あまりに幻想的に浮き彫りになっているWTCを見て、私はテロが起きてしまったことを今ひとたび、深く深く胸に刻み込んだ。 作品は作家たちの記憶の断片かもしれない。が、見る人に強く強く訴えかける。そして、永遠に鑑賞者に問いかけることができる。「見にいらした方からも反響をいただいています。いただいた言葉を作品のキャプションに反映させたいと考えています」(大坂さん談)。記憶の断片は見る人の心にしっかりと届いている。 ふとリヒターの言葉を思い出した。 「だれの心の中にもあの残酷さが潜んでいるとのべたとき、なにか希望のようなものを感じたのだ。 それはあたかも、この事実からこそ、ある種の向上、なにかを可能にするきっかけが生まれてくるかのようだ。」(1986年3月17日のノートより)(*4)。 今回起きたテロから、新しいなにかが生まれてくる、のだろうか・・・。 きっと、きっと生まれてくるはず。 私は、これらの作品から零れ落ちる、“希望”を感じとることができた、と信じたい。 そう、リヒターが「芸術は、希望の最高の形態である」と言ったように(*5)。 |
*1:清水穣訳『ゲルハルト・リヒター 写真論/絵画論』淡交社、2001年四版、p13(ペ−ター・サーガによるインタビューより、1972年) 展覧会カタログ『ゲルハルト・リヒター/ATLAS』2001年、p120(「ゲルハルト・リヒターの言葉」より) *2:Gerhard Richter『Landscapes』Hatje Cantz Verlag、1998年、p100〜101 *3:清水穣訳『ゲルハルト・リヒター 写真論/絵画論』淡交社、2001年四版、p141(ハンス・ウルリッヒ=オブリストによるインタビューより、1993年) *4:清水穣訳『ゲルハルト・リヒター 写真論/絵画論』淡交社、2001年四版、p111(1986年3月17日、ノートより) *5:市原研太郎「Gerhard Richter =The Painting of Schein=(ゲルハルト・リヒター=ペインティング オブ シャイン)」WAKO WORKS OF ART、1993年、p18、108より引用。この言葉は1982年のドグメンダの声明として使われた。 |
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